CompetitivEdge: Vol.1 株式会社スーパー・フェイズ– 「使用済みオムツを再利用可能エネルギーにする」という アイデア

by 唐川 靖弘, SGEアジアプログラム マネージャー (1/4/13)
唐川 靖弘, SGEアジアプログラム マネージャー

貧困、水、食糧、教育、環境など、世界が今直面する様々な課題。それらを解決しうる革新的な技術、製品、アイデアを世の中にご紹介し、新市場開拓のバックアップをしていく。そんな想いから私たちコーネル大学経営大学院SGEセンターは、このインタビューシリーズ“CompetitivEdge(コンペティティブ・エッジ)“を開始することとなりました。CompetitivEdge第一回目は、「使用済みのオムツを再利用可能エネルギーに転換する」という夢のようなアイデアを形にする装置を開発・販売している株式会社スーパーフェイズ。同社の木村社長にお話を伺いました



CSGE:

本日はお忙しい中インタビューにご協力頂き、本当にありがとうございます。早速ですが、木村社長のご経歴を拝見すると、スタジオの企画・設計やレーシングチームの運営など様々な業種を手がけられてきていることが印象的です。どのような想いをもって、これまで様々な事業に取り組まれてきたのでしょうか?またそれらの想いはスーパーフェイズ(Super Faiths)という御社の社名とどのように関連しているのでしょうか?

 

Super Faiths:

未来を見つめながら、新しいライフスタイルを思い描いてきた私は、新しいビジネスを創ることがプロデューサー(プロフェッショナル)の仕事だという信念をもって事業に取り組み、今までのビジネスを成功させてきました。ゴミとして焼却するしかないと信じられてきた「使用済み紙おむつ」の「燃料化」は、2004年から取り組みを始めました。
 Mr. Kimura

当初は自らがメーカーとなることは考えておりませんでしたが「誰もやらないので自分がやる」という、マーケットのエポックメーキングを目指して、「使用済み紙おむつを燃料化する」装置の開発および市場の開拓に専念してきました。

 

そのような取り組みはそれまで、「技術的にも現行の法律や関係業界の利害を考えても普及させられない」といった「思い込みの壁」に阻まれ続けてきました。そのような従来の社会常識を打ち破り、この極めて社会性の高い事業を世界中に広めるには、「この可能性を実現するのは私たちしかいない」という使命感しかありませんでした。

Mission(使命感)」「Vision(未来像)」「Passion(情熱)」があれば必ずアクションプランが生まれます。その実現に向けて挑戦し続ける可能性の培養装置集団となることを目指し、“Super Faiths”という社名をつけています。

 

CSGE:

SFDシステムと呼ばれる御社のシステムは「使用済みの紙おむつを燃料化する」という、まさに夢のような装置ですが、そもそもこの装置の開発に取り組まれることとなったのは何故なのでしょうか?当時から木村社長は社会や環境に対する問題意識をお持ちだったのでしょうか?

 

Super Faiths: 

今から約9年前、使用済みの紙おむつの処理に取組もうとしている仲間とのめぐり合いがありました。正直このめぐり合いまでは、使い捨てられた紙おむつゴミの多くが人目につかずに処理されていたこともあって、私自身何の問題意識も持っていませんでしたが、よく調べてみると大変な問題を抱えていることが分かりました。

当時既に紙おむつは、その技術進歩もあって大変な勢いでそれまでの布おむつに取って代わりつつあり、加えて日本社会の高齢化が拍車となり、紙おむつの消費量は急増していました。一般にはあまり知られていませんが、使用済み紙おむつのゴミは排泄物を含むとその3倍近い量となり、非常な勢いで将来増え続けることが確実でした。

 

ではその紙おむつのゴミはどう処理されているかと言うと、日本ではほとんどが燃えるゴミとして焼却されていました。その濡れて臭くて危険でかさ張るゴミの処理のために、梱包、保管、収集運搬、焼却処理という全てのルートにおいて、CO2などによる環境への負荷、人体への危険や不快、焼却炉へのダメージといった様々な問題を発生していることは明らかでした。

 

このままその状態を放置しておけば、それらの弊害は紙おむつ消費の増大によって取り返しのつかないほど深刻なものになることが予想されました。これに対処するため、焼却処理に代わる別の処理方法のアイデアは当時もいくつか提案され、試されていましたが、現実的な処理方法としては成功を見ていなかったのです。この閉塞状態を見過ごすことができず、私たちの技術で何としても打破したいと思い、SFDシステムの開発に着手しました。

 

CSGE:

市場には「使用済みの紙おむつを分解し、リサイクル可能な物質に変える」ということを可能にしているシステム・装置をお持ちの企業もあるようですが、御社のSFDシステムの具体的な差別ポイントはどのような点にあるのでしょうか?また、なぜその実現が可能になったのでしょうか?

 

Super Faiths:

私たちが開発に着手した時点では、日本でも紙おむつを水に溶かしてパルプを分離する実証プラントが既に稼動しておりました。しかしながら、処理コストが高く、プラントスケールが巨大で、他にも種々の問題を抱えており、現実的普及には程遠いものでした。私たちは、この処理方法を含むいくつかの方法の問題点を分析し、2つのアプローチを採ることにしました。1つめは、処理対象を紙おむつに絞ること、もう1つは、マテリアルを無理にリサイクルしようとするのではなく、元々ゴミとして焼却されるだけだったマテリアルを有用な燃料として活用するためにサーマルリサイクルすること(廃棄物を単に焼却処理せず、焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用すること)です。
SFD 

その結果、一つの密閉槽内で破砕・乾燥・滅菌という単純な工程によって、極めて高い精度の処理と生成物の安全性や再現性を確保することができるようになりました。また、水に溶かしてパルプを分離する方法のような水の使用や排出が一切ないので、感染などの危険を分散することもなく、安全な生成物を取り出すことができます。この生成物は燃料としての適性を備えており、優良な燃料(5,000 kcal/kg)として使用されますので、マテリアルとしての再利用のような安全面の不安もないわけです。

 

CSGE:

SFDシステムの普及にむけて現在はどのような取り組みを行われているのでしょうか?可能な範囲でお聞かせいただけますでしょうか?

 

Super Faiths:

7年前に某病院に2台の処理装置を設置し、更なるブラッシュアップを重ねてまいりました。これにより燃料化処理には充分な自信を深めておりますが、その燃料を活用するための固形化や燃焼技術は私たちの専門外です。時間がかかりましたが、最近ではそれらの固形化技術や燃焼技術を持つ良いパートナーに恵まれ、簡易成形からバイオマスボイラーという現実的な燃料活用への道を拓くことができました。これによって、施設内や地域内での資源循環が容易となり、普及の可能性は大いに拡大したと考えています。

 
diaperspellets








CSGE:

世の中に存在しなかったSFDシステムという装置や市場を新たに開発する上でご苦労もたくさんあると思いますが、これまでに新しい市場を開拓する上で木村社長はどのような点に留意されてきましたか?また、御社としてSFDシステムのさらなる普及を実現するために、解決しなければならないと認識されている課題としてはどのようなものがあるのでしょうか?

 

Super Faiths:

紙おむつのゴミに対する一般の関心が低かったこと、日本では他の処理の試みの失敗から紙おむつは焼却するしかないと行政など関係者の間で信じられていたこと、当時はサーマルリサイクルが軽視されていたことなど、いくつかの要素が普及への厚い壁となっていました。

 

努力の甲斐あって、最近では自治体での導入などを契機にようやく一般の関心も高まりつつあります。また、燃料の高騰や原発事故などの影響で廃棄物燃料の重要性が見直されており、SFD処理の現実性が高く評価されるようになりました。

 

今後この普及の波をさらに大きくするべく、本商品の利点を損なわないように留意しながら、製造原価と運転コストを少しでも引下げたり、小型化を進めたりして、普及しやすい商品を開発したいと考えています。

また、このコンセプトの市場は弊社だけが先行しているので、この市場を健全に発展させる意味からも、粗悪な商品の参入によって市場そのものが悪評を持つことの無いように、アフターケアを含む優良な商品を誠意 (Superfaiths)をもって提供し続けることが殊に重要と考えています。

 

CSGE:

今後、特に重点的に開拓されたい市場への想いを可能な範囲でお聞かせください。

 

Super Faiths:

日本国内でも自治体や廃棄物処理業者への本格的普及が始まろうとしていますが、同時に海外からの引合が非常に強まっています。欧州など先進国では、紙おむつは埋立てられているのが実情のようです。これでいいのか?布おむつに戻るべきではないか?という疑問が一般市民に広がり、メーカーの拡大生産者責任が問われているようです。

 

中国を始めとする新興国では、ゴミ処理のインフラが整わないうちに紙おむつの急激な普及が始まりつつあり、今後の先行きが憂慮されています。そのような背景もあり、グローバルに事業展開する紙おむつメーカーは、紙おむつを持続可能な商品として新興国に浸透させるべき、という思いを強く抱いているようです。

 

弊社は現状、経験も人材などの体制も不足していますが、製品輸出あるいは技術輸出を通じて、世界を救うシステムとしてSFDシステムを何とか普及させたいと思っています。そのために製造・販売・アフターケアサービス・回収・燃料活用などの分野における強力な現地事業パートナーを各市場で必要としています。

 

 

株式会社スーパーフェイズについて

 

http://www.superfaiths.com/ (日本語版)

http://www.superfaiths.com/english/index.html (英語版)

 

 

コーネル大学SGEセンターについて

 

http://www.johnson.cornell.edu/Center-for-Sustainable-Global-Enterprise.aspx

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